狂愛ノ書~紅き鬼と巫女の姫~

鵺姫ノ運命





三篠に支えてもらいながら大きな鏡から足を出して、床に降り立つ。
久しぶりに踏んだ本殿の床に懐かしさが込み上げてきた。




「……帰ってきた………」




相変わらずの本殿。
埃が少ないことから、私がいなくなってからはおじいちゃんが掃除してくれてたみたい。




それとも私に化けてた紅葉かな?
どちらにしても感謝しないとね。




「久しぶりの神社はどうだ?」


「……変わらなくて安心したかな」




三篠に顔を覗き込まれ微笑んで答えると、三篠はふっと笑い私の頭を撫でた。




ダダダダダダッ…………




三篠と微笑み合ってると遠くから誰かが走ってくる足音が聞こえた。




もしかして怒ったお母さんかと思うと怖くなって三篠にしがみつく。




ドンッ!
勢いよく戸が開いて現れたのは…




「小雛しゃま〜!みしゃきしゃま〜!!」




私と三篠に飛びついてきたのは、もう一人の私だった。
涙のせいで三篠の名前を噛みまくってる。




ドッペルゲンガーかと思ったけど、声を聞いたら誰なのかすぐに分かった。




「……久しぶり、紅葉」




変な感じがするけど、もう一人の自分の頭を撫でる。
するとボンッと音をたててもう一人の私は紅葉に戻り、私に抱きついてきた。




迷子になって親を見つけた時の子供みたいに泣きじゃくる紅葉。
その懐かしい姿によしよしと頭に生える耳を撫でた。




喜んでる証拠に尻尾を左右に振っている。




数分経って紅葉はようやく泣き止んだ。
目と鼻が赤くなってて可愛いと思ったのは秘密。




「…紅葉。小雛の影の役、ご苦労だったな」


「い、いえ!三篠様と小雛様のためなら、これくらい容易うございます!」




三篠に頭を撫でられ、紅葉は照れながら三篠に敬礼をした。




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