狂愛ノ書~紅き鬼と巫女の姫~




「…あ、私達は邪魔者なので失礼しますね。
またお話ししましょう、姫様」




両手で赤くなった顔を隠していると、瑠璃葉と海似さんが去っていく足音が聞こえた。




邪魔者って……?




よく分からずに手をどかすと、私の覆う影が三篠のものだと気付く。




三篠は、「お前は顔を隠して何してるんだ」と言いたいような顔をしてこっちを見てる。




「…あ、み、三篠!仕事は?」


「…さっきひと段落ついたところだ」




両手で顔を隠してジタバタしていた理由を聞かれないように、私は話を逸らした。




三篠が私の隣に腰を下ろしたので、私は慌てて起き上がった。




「…み、三篠!?」


「…少し休ませろ」




私が起き上がってすぐ、三篠は上体を倒して私の太腿に頭を乗せた。
要は膝枕。




いきなりで驚いたけど、三篠が疲れてるようだったので三篠の髪を優しく梳いた。




それを肯定と受け取った三篠はゴロンと寝返りをうって、私のお腹に顔を埋めた。
いつの間にか草履を脱いでいて、三篠は縁側に寝そべっている状態。




「…屋敷に戻ったらお前がいないから、人間界に戻ったのかと不安になった」




三篠の片手が腰に回り、軽く抱き締められる。




もしかして帰ってきて屋敷中探し回ってくれたのかな。
だとしたら申し訳なくなる。




「ごめんね。瑠璃葉に子供達の面倒を見て欲しいって頼まれて…
外出するならメモとか残しておけばよかったね」




ごめん。
もう一度謝って、三篠の髪に顔を埋める。
三篠はピクッと反応したが、やがてふっと笑う声がした。




そしてこっちを向いたかと思うと、ちゅっと触れるだけのキスをされた。




びっくりして目を見開いたまま固まってしまう。
三篠は私とは反対に、余裕そうな笑みを浮かべている。




「……仕方ないから、これで許す」


「……〜〜〜〜っ」




ズルい。
三篠といい海似さんといい、私に有無を言わせないことを言うのがズルい。




「……もう」




言葉が見つからずにこの二文字だけを眉をハの字にして言う。
それを見て満足したのか、三篠はふっと笑って起き上がった。




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