狂愛ノ書~紅き鬼と巫女の姫~
第六ノ書




【side 瑠璃葉】




カコン




柄杓が地面に落ちる音が、頭にやけに響いた。




今、紅葉はなんて言ったんだい?




胡蝶ノ国が黒兎側の妖達に襲われてる?




母様や菊葉と蜜葉が戦ってる?




しかも劣勢?




ついにこの時が来てしまったのだと思った。




手から落ちた柄杓から水が零れている。




「瑠璃葉母様……」


「…瑠璃葉」




紅葉が眉をハの字にしてアタシを見つめている。
隣にいた海似に手を握られた。




そんな二人にアタシは笑顔を向けて、落ち着くことなんて出来やしなかった。




紅葉は胡蝶ノ国が襲われている理由は分からないと言っていた。




でもアタシにはすぐに分かった。




胡蝶ノ国が襲われているのは、アタシのせいなんだ。




アタシが混妖として生まれ、三篠様の下についたから家族の住むあの国が襲われた。




姫様が来た時から、ずっと考えていたじゃないか。
黒兎が動き出すとしたら、混妖であるアタシがいる胡蝶ノ国が狙われやすいってことを。




それが今来ただけじゃないか。




それなのに、自分を責めずにはいられないんだよ……!




アタシがいなければ母様も菊葉も蜜葉も戦わずに済んだ。




アタシが混妖じゃなく純妖だったら、誰も傷つかずに済んだ。




持っていたバケツも手から落とし、水を零す。




< 196 / 201 >

この作品をシェア

pagetop