Amarosso~深い愛~の作り方♪
10.冬はやっぱり罠を張る

   *

キスの夜から、麗華と顔を合わせることなく、修学旅行は終わった。

怜士が慎重に行動をしたこともある。

アイーシャに、麗華への感情の強さを悟られるのは危険だ。

だが胸の中がずっと渦巻く感じは薄れなかった。

腹立たしさと不安と、恐れ。

クラスでは期末の前の点火祭が話題になっていた。

麗華は美和と行くらしいと、男子が噂をしているのを耳にした。

またイライラする。

他の男ではなく、美和とでなら、まだマシ。

そう思うしかなかった。

あれから一年か。

あまりにも無意味に時間が過ぎたようで愕然とする。

去るまで、もう何ヶ月も無い。

このまま去って、いいのか。

怜士の中には不安が大きくなっていた。

麗華に自分の痕跡を何も残せていない。

このままだったら、自分の事などあっさりと過去になるだろう。

だといって、どうする?

方法が思いつかず、あせりばかりが募っていく。
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