きっともう大丈夫
「ふ~~っ。やっぱり寒いね。もうすぐ11月だもんね~」
長袖Tシャツとパーカーではさすがに少し寒く身震いしてしまう。
「沙希!ほれ」
呼ばれて振り向くと明良が車から持ってきた膝かけを私に向かって放り投げそれをキャッチした。
「サンキュー」
私たちはいつものように夜景が見える場所まで行くと近くのベンチに
腰かけ、膝かけをかけた。
「星が綺麗だね・・・」
「ああ・・・・」
明良が深く息を吐いて私を見た
「社長と話してた事なんだけど。」
「うん・・・何の話?」
「俺さ、独立しようと思ってるんだ。」
「独立?」
「ああ・・・ずっと前からの自分の店を持つのが夢だったんだ。
でもすぐじゃねえよ。2~3年後ぐらいかな・・・それまでに
社長から経営の事や仕入れの事を学んで、独立する」
「す・・すごい!大丈夫だよ明良なら絶対いい店できるよ。」
「それはどうかな?」
明良ほどのセンスと腕があれば絶対に大丈夫なはず。
「今からどうかな?じゃだめだよ!今までいろいろ考えて決めたんでしょ。
自信持って。・・・そっかー楽しみだね・・・」
明良の夢応援しなくっちゃね。そのためにも私が一人前になって
明良を送り出してあげなきゃ。そう思ったが何だか胸が痛んだ
独立するって事は別々になるってことだよね・・・
「沙希。」
「・・・ん?」
「その時はお前も一緒だからな!」
「ん?私?」
暗いけど明良の顔が赤くなっているのがわかって今言われたことの意味を
やっと理解した。
「えええええ!?」
「なんだよ!そんなに驚くなよ。びびるじゃねーか」
「いや・・・私の方がビビってます。あの・・・それって・・・」
「さっき社長と話してたっていうのは・・・沙希の事もあったんだよ」
もう頭が真っ白で思考回路が切れそう
「2~3年時間やるからその間、技術叩き込んで俺と対等になれよ。そしたら
その・・・ちゃんと雪村沙希から鈴木沙希にしてやっから・・」
もしかして・・・・もしかして・・・今のってプ・・プロポーズ?!
え!信じられない・・・。え・・
「おい」
あーどうしよう。今度は本当だよね。前みたいなことないよね。
でも2~3年後だもんね。ど・・どうなんだろう。
「おい」
あー私次第なんだよね。私が下手なままだと振られる可能性も?
「さーき!」
「ふぇ?」
「おい・・・どこから出してんだよそんな変な声」
「ごめん。だってびっくりしたんだもん」
「まだ付き合って1年もたってねぇのにプロポーズしたから?」
「・・・ううん。明良が仕事もプライベートでも私を必要としてくれてた事にびっくりして」
「ばーか。あたりまえだっつーの!」
どうしよう。めちゃめちゃうれしい。
ここで踊ってもいいくらいハッピーだ。
「明良・・・私頑張る」
「頑張って早く俺の所まで来い、明日から今まで以上にビシビシいくからな。」
はいって返事しようと思っていたのに
返事をする間もなく明良に唇を塞がれた
それは今までのどのキスより甘いものだった。
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