きっともう大丈夫

新しい命と決断

詩織が分娩室にはいって2時間が過ぎた。
私は一海さんと分娩室の前ベンチに座っていた。
一海さんもさることながら私も出産は未経験で
ただただ二人してそわそわしている。
「沙希さんごめんね」
一海さんが急に謝るので驚いた。
「何で?何も謝られるようなことしてないよ」
「いや~生まれてから連絡すればよかったのに俺焦っちゃってさ」
「そんな~連絡くれて、私うれしいのよ。詩織と一海さんの赤ちゃんに会えるんだもの」
一海さんは恐縮しながら頭をかいている。
「あ!そう言えば俺、明良さんに連絡するの忘れてた」
「あ!私も明良の事すっかり忘れてた・・・・ちょっと電話してくるよ。
まだ生まれそうにないしね、明良もきっと飛んでくるわ」
そういってその場を離れ明良に電話をする
ところが電話に出る気配がない。
時計は既に夜の10時を過ぎていた
もう家にいてもおかしくない時間だった。
もしかすると風呂にでも入ってるかも知れない。そう思い電話を切り
メールで状況を説明しておいた。

詩織はそれから3時間後に無事男の子を出産。
生まれたばかりの男の子はなんとなく一海さんに似てるようなかんじだった。
時計は日付も変わり午前1時を過ぎていた
母親になった詩織の顔はとても幸せそうだった。
2人の幸せな姿を見て胸が熱くなり、子どもっていいなって
素直に思えてきた。
こんなことなら仕事仕事って言ってないで明良との子どもを作りたいと
本気で思っていた。
この日私が帰宅すると明良は既に寝ていた。
「・・・なんでメールも電話もしたのに連絡くれなかったのよ」
私のつぶやきは明良の耳には届かなかった。
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