犬との童話な毎日

***

高校から駅まで10分。
電車に乗る時間はそんなに長くない。
また駅に着いて自宅まで5分ちょい。
でも、その駅から家までの道を今日は少し遠回りした。

「沙月(さつき)ちゃーん、調子どう?」

白いカーテンを掛け声と共に開ければ、しゃ、と軽い音がした。
簡素なベッドが現れて、その中に寝転がった人から笑い声がした。

「りっちゃん、早速だわね」

7歳年上の大好きな従姉妹が、手を振ってくれる。
その顔を見て安心する。
何時もの沙月ちゃんだ。
その声も張りがあるし、顔色も悪くない。
気落ちした様子も無かった。
質素な白いお布団から出たコードが、何やらモニター付きの機械に繋がっていて、白い部屋に機械音を響かせる。


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