犬との童話な毎日

一本の枝垂れた枝に付いた花達が、あたしの腰位までもありそうな大きな岩を優雅に撫でている。
優しく優しく。
夢を見ているようだった。
あまりにも綺麗で。

思わず息をするのも忘れて魅入ってしまった。

正直、鳥肌が立った。
魂を持って行かれる、とはこう言う事を言うんだと思う。
自分が無くなる程に意識を引っ張られる。
アホみたいに、口をぽかん、と空けたまま見上げていたけれど。

ざあ、と一際強い風が吹いて。
やっと我に返った。

……よだれ垂れてないよね。

口元を何となく手の甲で拭ってから、足を進めた。
まだ満開にはなっていない、咲きほころび始めた枝垂れ桜に近付く為に。



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