雪ノ空【完】
「まだ俺は生きてるよ、ほら」
そういってトラの手をつかみ、
俺の左胸に当てる。
トクン トクン トクン トクン
決まった間隔で存在を示す音。
でも近いうちにこの音は
自分の存在を示すこともなくなる。
それが怖くてたまらない。
「ちゃんと生きてる。生きてるよ」
自分にいい聞かせるようにいう。
「…あぁ、生きてる」
そういって抱きしめる力を強めた。
消えそうな俺の体を
強く、強く抱きしめてくれた。