カットハウスやわた
「ランチは、予約しているから」


熊野さんはそう言うと、私の隣の部屋に入っていった。そして、引越用のラフな格好から、お洒落なシャツとズボンに着替えてきた。


「おまたせ」


「……あの……もしかして……」


「そう。隣は、オレが住んでいるから。オートロックがなくても、問題ない」


……あなたがいるほうがオートロックがないことより、問題がありそうですが?
私は、愛想笑いを浮かべた。


鍵を閉め、駐車場に向かう。先ほどの軽トラックの前を通過し、シルバーのBMWの前で足を止めた。どうやらこれが愛車のようだ。


「助手席は右、だから」


「外車といえば左ハンドルでしょ?」と言いたげに、ニヤリと笑った。私は、違和感を覚えながら、右の助手席に座った。



< 35 / 90 >

この作品をシェア

pagetop