家出少女と風花寮
「今のみた?見たよね!? こんな間近で見れるなんて、もう、死にそう。ハアハア……」

どこかに萌えがあったらしい。

「解説するとね………」

以下、青木フィルター越しの世界。

『すごい音がしたと思って来てみたら、(俺という恋人がいながら)なに同居人の女口説いてんだ』

『女の子は等しくマイスウィートなんだよー(だって、きーちゃんを嫉妬させられるし)。それにー、昨日の子とは別れたよ(きーちゃんの反応がイマイチだったからね)』

『遊び過ぎが祟ってフラれたか?(だから、浮気なんてやめて、俺だけにしろ)』

『オレからフったのー。あの子はオレの運命の相手じゃなかったみたいだから(きーちゃんを嫉妬させられるほどの相手じゃ、ね)』

『どの口がマイスウィートなんて言いやがる(あんたのマイスウィートは俺だけだろ)』

『この口この口!』

『……(俺以外に愛を囁く口なんて)縫い付けてやろうか?』

『オレの口を塞いでいいのは、ハニー(きーちゃん)の唇だけさ』

『よし、(他の女に盗られるくらいなら)縫おう』

『え、本気……?(やっべー怒らせた?)』

以上。

「てなわけで、浮気症チャラ男×純情不良が目の前で繰り広げられていたわけなのだよ!」

うん、さっぱりわからない。

「わからないって顔してるね。いいんだ、まだひと月しか経ってないんだから」

同情するように肩を叩かれ。

「これからもバンバン教えてあげるからね」

ツヤツヤのいい笑顔で親指を立てられた。
青木、萌え補充完了。

「そうと決まれば、早速僕の部屋に行こう!」

「えっ、ちょっ………!」

脇に手を入れられ、浮き上がった私は気付けば青木君に横抱きにされていて。

「今日は不良受けの日だ!終わるまで寝かさないよ!」

「ちょおおぉぉぉっ!」

彼の細腕のどこにこんな力があったのでしょうか。
鞄と北山君を置き去りに、青木君の部屋に運搬された。

萌エネルギー恐るべし。

その後。
夕飯を挟んで、青木君の部屋で深夜帯まで不良受け講座を受講した。
ついでに、BLアニメのリアルタイム視聴も。

どんどんお肌ツヤツヤになっていく青木君。

「お疲れ様でした。これどうぞお貸しします。今日のも僕のオススメばかりですよ」

解放されるころには、履修の課題、関連するマンガを持たされた。
初めの頃は少女マンガ風な絵だったのが、今では少年マンガ風な絵のものが多くなったように思う。

「………」

あまり抵抗を感じなくなっていることに、喜んでいいのやらなんとも複雑な気分。
むしろ、下手な少女マンガよりも面白いから、楽しみにしている自分もいたりいなかったり。

着実に教育されつつある。

私の腐レベルが上がったことが発覚した……。

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