家出少女と風花寮

中島健吾という人物

「やりました! おふたりとも、ありがとうございます!」

「よかったな、ゆき」

「はい!」

北山君に頭を撫でられ。

「これでゆっくり僕と語り合えるね」

「………うん」

鼻息荒い青木君には歯切れ悪い返事をした。

風花寮の居間にて、私は、帰ってきた答案用紙を広げていた。
どの回答用紙も、丸が半分近くを占めている。

それもこれも、おふたりの助けがあってこそ。
本当に、感謝してます。

「でも、おふたりはテスト、大丈夫だったんですか? ずっと、私に付き合わせてしまって………」

「大丈夫だ」

安心させるように見せてくれた、北山君の答案用紙は、9割以上に丸がつき。

「僕も、ご心配には及びません」

眼鏡を光らせる青木君に至っては、バツがひとつもなかった。

「……………」

もはや私に言えることはない。
思うことは、このふたりの頭の中はどうなっているのかと。

「よーっし、では、夕飯の後すぐにでも語り合いましょう! 先にお風呂いただきますね」

そんなに私の教育解禁が嬉しいのか、鼻歌まじりに居間を出て行く。

「ほんとあんたら、仲良いな」

「あ、あはは………」

仲良いのか微妙なところだけど、良くないのとは違う気がして、曖昧に返す。

「ああ、テスト返ってきたんですね」

「あっ、大家さん」

「その様子だと、合格点は取れたようですね」

「はい、おかげさまで。この度はご迷惑をおかけしました」

「迷惑なんかとんでもない。勉強は学生の本分ですから」

鈴蘭のように柔らかな笑みをたたえる大家さん。
癒される………。

ほっこりしていると。

「見つけた! オレの運命の人!」

お風呂場の方から大きな声が聞こえた。

「中島だな」

「中島君だね」

「中島君ですね」

私たちの声が揃った。

「運命の人と聞こえたが」

「確かに聞こえました」

「…………」

青木君………。

私は心の中で合掌した。
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