家出少女と風花寮
夕飯を食べ終え、北山君と並んで食器洗いをする。

居間では、双子兄が双子弟の股に座りテレビを見ている。
弟が兄の腹に腕をまわし、閉じ込めている。
そんな彼らを囃し立てるのが、青木君と中島君。

「もうこれ、カップルだよ! デキちゃってるよ!」

「ヒューヒュー!」

「………」

大家さんは気にもとめず、銀縁眼鏡をかけて新聞を読んでいた。

「ふふっ……」

少し前までは、食後まで居間にいる人はいなかった。
だけど、中島君が青木君と仲良くなってから、皆とどまるようになった。

「どうかしたか?」

「いや、あの、こうして同じ空間に集まっていると、仲良くなってきたあかしのようで、嬉しいんです」

「当然だ。俺たちは家族なんだから」

彼は蛇口を絞り、洗い物を終える。

「同じ釜の飯を食った仲、ですね」

「ああ」

私も、拭き終わった食器を棚に入れた。

ふたりで居間に戻ると、中島君が双子に話しかけるところだった。

「ねーねー、アキちゃんとシュウちゃんは禁断の関係だったりする?」

「………なに、藪から棒に」

不機嫌そうな園田弟。

「こら中島氏、直接訊くんじゃない!」

止めるのは、意外にも青木君だった。

ふたりとも大きな声で話してたではないですか。
直接訊かずとも、周囲にはバレてるんですよ。
なのに今更訊くなとおっしゃるか。

「りおちゃんだって知りたいくせにー」

「世の中には聞いていいことと悪いことがあるんだよ。……………拒否されてみろ、ショックでしばらくご飯が喉を通らなくなる」

「大袈裟だなぁ」

「本当の話。夢を見ようじゃないか。幸せな夢を………」

「現実も絶妙なスパイスになっていいよー」

「中島氏は知らないんだ! 押しの攻メンズが彼女持ちだと知った時のショックといったら……」

「大丈夫だよりおちゃん! 攻メンズは、自分が男友達を恋愛の意味で好きなんだと知って、否定したくて彼女を作ったんだから! そのうち、やっぱり俺はあいつじゃなきゃダメなんだ、って気づいてくれるよ!」

「おおっ、言われてみればそうですね。でしたら僕は、彼らの寄り道の末のハッピーエンドを見届けなければ! 僕としたことが、今まで勿体無いことを……」

「っとー、それはゆくゆく追跡するとしてー、今は園田双子のことねー」

へらりと笑って、中島君は園田弟に話しを振る。

「でー、どうなのよシュウちゃん?」

赤面した顔を弟の胸に押し付ける兄。
青木君が小さくきゃあと鳴く。
兄の背中をなだめるようになでる弟の顔は、慈愛に満ちている。

「ふたりの妄想はあながち間違ってないよ」

「てことはつまり」

「ボクが兄さんに手取り足取り色々………ね」

「キャー!!」

聞きたくないと言っていた青木君が促し、悲鳴をあげた。
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