もう弟なんてやめてやる。
穂乃華が鞄と日誌を持って
教室から退室。

残された陸が小さくため息をついた。


だから苦手なんだよな、芹沢。

何でも見抜かれてる感じがして、
正直怖い…



「………」


クンクンと自分のカーデを匂うと
確かに柑橘系の匂いがする。

────あの女、か。

今まで気づかなかった…


急いでバサッとカーディガンを脱いで
グッと鞄の中へ押し込んだ。


雫に、

気づかれる訳にはいかない。



「…雫、遅いな…」


早く会いたい。
早く声を聞きたい。


─────…早く。

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