Dear・・・
博昭が話していると、犬は慶介に飛びつき顔中を舐めたくる。


「くすぐってえなあ」


慶介は笑いながら、犬とじゃれあう。


「で、名前は?」


「ポチ」


「安易だなあ。まあ、間抜けそうなこの顔にはピッタリかもな」


慶介は笑いながら、ポチの頭を撫でる。


「そいつそう見えてすげえ頭良いんだからな!」


「この顔で?」


ポチの顔を覗き込む。


「で、慶介は何してるの?」


瞬間、慶介の顔から笑顔が消える。


無表情のまま、何も答えずにただポチの頭を撫で続けた。


博昭は何も言わず、慶介の横へと座る。


おそらく翔太の事で悩んでいるのだろう。


博昭は興味の眼差しで博昭を見る。


さっきまで、慶介にじゃれていたポチが、博昭の元へと飛び移る。


「俺、学校じゃ結構、兄貴肌なのよ。頼りないかもだけど話聞くよ?」


博昭が優しく声をかける。


しかし、慶介はなかなか口を開こうとしない。


慶介の目から、我慢していた涙がとめどなく流れてきた。


慶介はとっさに顔を伏せ、泣き顔を見られないようにする。


波の音が慶介を包み込む。
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