Dear・・・

礼人の場合

今思い返せば、俺の人生は四歳で終わっていたのかもしれない。


俺が四歳の時、弟が出来た。


病院中に響き渡る声で俺は喜んだ。


とんだぬか喜びだった。


まだ、生まれてすぐは良かった。


あいつが小学校に入った頃から異変は起きた。


あいつは何でも出来た。


俺も容量は良い方だが、あいつはそれ以上だった。


両親はあいつ中心の生活に変わっていた。


医者家系のうちには出来る奴は宝物だ。


俺は悔しく、両親が求める名門中学校への受験をし、合格した。


少し俺に注目が集まった。


父親は、自分の学生時代を思い出し、俺にギターをくれた。


だがその栄光も一瞬だった。


あいつが全国模試で百位以内に入った。


あいつより四学年上の奴らが受けるテストで。


つまりあいつは俺を超えた。


俺は完全に居場所を失った。


俺は家にいるときは部屋に引きこもり、ギターをならしていた。


比べられるのがイヤで、誰かの曲は弾かず自分の曲を弾いていた。


学校の順位はあっという間に落ちた。


母親は嫌悪感に満ちた目で俺を見るようになった。


俺は何かと比べられるのに心底嫌気がさした。


俺が高校に行かないと言った時も無関心だった。


十六の時、家を出た。


金は母親がたんまりくれた。


二度と帰ってくるなということだろうか。


あいつの中学受験が控えてたから、どうでも良かったんだろう。
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