Dear・・・
知るはずもないこの関係を博昭は知っているのだろうか。


そんなはずはない。


だが、気づいてしまったのかもしれない。


冷やかしの言葉がどこからか聞こえる。


「図星だべ?てか、分かり過ぎだよ。動揺しすぎだしさ。昔から慶介って翔太と喧嘩するとすぐ凹むよな」


博昭の幼げな微笑が慶介に向けられる。


慶介はただの喧嘩だと思っている博昭にほっとした。





「で、何があったの?」


と、一瞬で表情が変わった。


その表情から、博昭が真剣なのは伝わる。


幼い頃から慶介と翔太の喧嘩の仲裁をしていたのが博昭だった。


親しいだけあって、博昭はいつも的確なアドバイスで二人を仲直りさせていた。


だが、あの頃とは状況が違う。


慶介はうまく言葉が浮かばないでいた。


「慶介、ジュース買いにコンビニ行こうよ」


博昭は急に立ち上がり言った。


慶介も無言で立ち上がった。


おそらく博昭はこの場では話しづらいのだと思い、場を変えてくれるのだろう。


しかし、場を変えたからといって話せるものでもない。


慶介は懸命に二人の関係がバレないような話を考えていた。


「ジュース買い行くけど欲しいやついる?」


慶介が頷いたのを確認すると、他の四人に声をかけた。


「俺、コーヒーブラックで」


一番に声を上げた礼人。


智貴は烏龍茶、優人はコーラを頼む。


翔太からは何も返事がない。


ヘッドフォンを付けているので博昭の声が聞こえなかったのだ。


「以上でございますか?」


翔太の事など気にせず、博昭はおどけてドアを出て行った。


慶介はその後を静かに追う。


博昭は、二人の関係をカミングアウトされるのではないかという笑いを隠すので必死だった。
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