獣耳彼氏



その時、視界の端で何かがキラリと光った。


それはお兄ちゃんの近くに立つ司さんの左腕。


手首につけられている水晶のブレスレットが光ったのだと分かる。


さするようにそれに手を当てる彼女。



「いいわ、凌。彼女、秋のこと知っているみたいだし、本当のことを言えばいいわ」


「え?それって…」


「俺が妖狐なのを知っているだけだ」



凄く久しぶりな感じがする秋月くんの声がそう吐き捨てる。


瞬間、驚愕の表情を浮かべるお兄ちゃんに思わず笑ってしまう。


顎が外れるのではないかと心配になりそうになる程に大きく口を開けて。


間抜けにも程がある。



しかし、それもほんの数秒のことで、ふと真剣な表情になる。


眉間に皺を寄せ、考え込む姿に今度は私が驚く。



「真琴…本当なのか…?」


「え、うん…そうだけど」



静かな口調で尋ねるお兄ちゃんに逃げ腰になてしまう。


なんで、なんでお兄ちゃんはこんなにも怒っているの…?


滅多なことでは怒りを示さないお兄ちゃんの今の姿に動揺する。


今にも秋月くんに掴みかからんとしそうな勢い。


秋月くんを睨みつけるお兄ちゃん。


お兄ちゃんのこんな姿を初めて見た。



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