来い恋
事務所にいるのが何だか嫌で、早めに総務に行こうと書類を整理していると次長から
「吉野ちゃん。検品に俺宛の荷物が届いてるみたいだから総務の帰りに寄ってってくれないか?
そんな重いものじゃないんだ。いつものあれなんで」
と苦笑いされた。
次長のあれとはPCのパーツなのだ。
次長は自作PC作りが趣味らしく自他とも認めるPCオタクだ。
奥さんの目もありパーツのお届は会社だそうだ。
いつもは面倒なお願いだが今日だけは二つ返事でOKした。
総務経由で検品に行き次長の荷物を受け取った。
事務所に戻ろうとエレベーターを待っていると
肩を叩かれた。
振り向くとそこには四宮さんがいた。
「こんにちは」
「こんにちは、吉野さん」
きっと例の女の正体を教えろってことよね(私なんだけど)
四宮さんは私の腕を掴むとエレベーター横の社員用の階段付近で止まった
「・・・例の件わかった?」
か・・顔近いです。思わずのけぞりそうになるのを必死におさえた
「聞きましたよ」
四宮さんの目がさっきよりも鋭い
「で?誰よその女!」
「人違いって言われました」
亮輔さんの言った通り人違いって言いましたよ!
「そんなの嘘よ!」
はい嘘です。その女は私ですが言えません。あんたに殺されます。
「嘘って言われても、課長からは人違いだ。俺は出張前でバタバタしてたから
 仕事帰りにどこかに寄ったりもしていないって・・・そう言ってましたよ」
私ってばアドリブ入れちゃってる・・・
だが、四宮さんは腑に落ちない様子だ。
「本当に?あんないい男そう滅多にいないから人違いとかあり得ないんだけど」
信じてないよね・・・思いっきり信じてない顔してる。
「あなた・・・本当に本人から聞いたの?」
「聞きましたよ!信じてないなら直接本人に聞けばいいじゃないですか?」
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