彼はお笑い芸人さん
「実は僕……」
コーヒーショップの二人がけのテーブル席に向かい合い、一口二口それぞれのコーヒーに口を付けた頃合で、遠藤君が口火を切った。
キター、何かしらのカミングアウトのテンション。
低いトーンに、微かな緊張が漂う。
「小西さんのことが、好きみたいなんですよね」
――――え?
「あっ、えっ?……仕事で、悩みって……」
会社もう辞めたいとか、上司が苦手だとか、てっきりソッチ系の話だと構えていた頭が真っ白になる。
遠藤君は滑らかに言葉を続けた。
「仕事中、気になって困ってます。小西さんのことが気になって。入社したときから、可愛いなとは思ってたんですけど。日に日に、気になる度合いが強まって。この前タイ旅行したとき、はっきり自覚したんです。ああ僕、小西さんのことが好きなんだなって」
思いもよらぬ告白に、驚いて言葉も出ない。
嘘何これどうしよう、入社したときから日に日にって……そんな素振りあった? なかったよ、なかった!
急にそんなこと言われましても!
「あ、あの……私、」
「知ってます。彼氏いますよね。小西さんに彼氏がいるとかいないとか関係なく、僕は小西さんのこと好きです。それを知っといてもらえたら。奪ってやろうとか、そういうんじゃないんです。もし彼から気持ちが離れそうなときがあったら、僕と天秤にかけてもらえますか? そのときに選んでもらえるよう、精進します」