四月の魚 〜溺れる恋心〜【短編】
あたしと朝倉くんが出会ったのは今から一年前。
高校一年生の春だった。
お互い苗字があ行で出席番号一番で、隣の席になった。
入学式から次の席替えまでの間は出席番号順の座席だったからだ。
彼は入試の成績が良かったようで、先生の推薦で学級委員長になった。
あたしも流れで学級委員をすることになり、一年間、協力してクラスをまとめ、決め事を決めたりしてきた。
なので、あたし達は決して仲が悪いということはなく、クラスの男子の中では親しい方になると思う。
だけど、なんせあたしはイケメンアレルギーなのだ。
今まではそれを知られないように、触れ合わない距離を保ってきたつもりだ。
それのどこに好かれる要素があったというのか。
あたしにはさっぱりわからなかった。
「…なんていうか、朝倉くん、女の趣味悪いね」
自分を必要以上に卑下するつもりはないけど、自分が特別可愛いとかできた人間であるんなんてことも思っていない。
至って普通の女だ。
その自覚はある。