空とシャボンとさくらんぼ
さくらんぼ



次の日も窓を見るとシャボン玉がぷかぷかと浮かんでいた。


桜坂くんはいない。


というか今はほとんどの生徒がいない。


なんか先生の都合で自習になっちゃったから、多分みんなサボってるんだろうなぁ…


桜坂くんしかりだ。



チャイムが鳴ってお昼休みになった。


今日、真琴は学校を休んでいる。


理由、学校行くのが面倒くさい、らしい。


いいなぁ……あたしもそんな理由で休んでみたいよ。


母親が許さないけどね。



お昼ご飯を早々に食べ終わって、あたしは今日も屋上に向かった。



どうしてだろう……


自然と足が向いていた。


カンカンと長い階段を上り、微かに開いている扉を押す。



「わぁ…やっぱりすごい」



屋上に出ると、前と同じ、真っ青な空が広がっていた。


今日は白い雲もふわふわと浮かんでいる。


それと一緒にキラキラとシャボン玉も浮かんでいた。



シャボン玉?



隣を見ると昨日と同じように、どこか優雅に座っている桜坂くんがいた。



「物好きだな。今日も来るなんて」



くすり、と微かに笑って桜坂くんはあたしを見た。



「え、と……」



わ……桜坂くんの笑顔とかレアだ……初めて見た。


いつも見ている彼よりも幼く見えて、少しだけ胸が騒いだ。



「とりあえず座れば?」


「う、うん……お邪魔します?」



……自分で言っといてなんだけど、お邪魔しますってなんだ。


言葉、おかしい気がする。


桜坂くんは何もつっこまないけど…


な、なんか意識しちゃうなぁ。


ちょこん、と少し間をあけてあたしは腰を下ろした。


日陰になっているからか、コンクリートはひんやりしていて気持ちよかった。



「で、なんか用?」


「よ、用事?いや、特にはないんだけど……なんとなく、足が向いちゃって……」





< 8 / 46 >

この作品をシェア

pagetop