俺様とネコ女
キスに酔う。もっと、ずっとしていたい。


ねえコウ。なんでこんなキスするの?気持ちいいよ。またしたいよ。お別れの、最後のキスじゃ、ないよね。


唇が離れ、名残惜しそうに目を開ければ、至近距離にコウの顔。その微かに笑みを浮かべた表情は余裕で、どこか勝ち誇ったように見えた。


「笑わないでよ!」


助手席のドアを開けて、逃げるように車から降りた。


「お前、俺の虜だな」

「うるさいバカ!」


乱暴にドアを閉めると同時に、なんとも情けない捨て台詞を吐いて、駅の階段を駆け上がった。慣れない駅の階段、おぼつかない足元。何度も足を踏み外しそうになる。

それでも、ニヤニヤと緩んだ顔はしばらく元に戻りそうもなかった。
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