秘めた恋
随分と奥側の棚に入ってきた。
まるで深海に入ったかのように薄暗くひんやりしてる。
彼は、ここか、と言うと掴んでいた私の腕を離した。

まだ彼の感触が残っているような気がして
体がうずく。

「ありがとう。」

彼は私を見下ろして言ったので、
いいえ、とはにかんで応えた。

その時だった。

「霧島さん、メガネ取った方が良いんじゃない?」

と言ってきた。

「へ?」

彼は私のメガネに触れるとゆっくりと持ち上げた。

彼の顔がぼやけて見える。

「あ、あのーー・・・。」

訳も分からず口ごもるが
ぼんやりしながらふいに思った。

古橋君に真正面から見つめられてる気がした。
そして徐々に二人の距離が狭まりつつあることも・・・

「古橋君・・・。」
「だまって・・・・。」

そう言うと突然、彼の顔が近づき彼の唇が私の唇に触れた。

突然の出来事に私はフリーズする。

一瞬、唇が離れるとまた食むようにキスを繰り返され、
生まれて初めての衝動に耐え切れず私は軽くバランスを崩した。
彼は私の体を支えると「大丈夫か?」と聞いてきた。

こくんと頷くが、彼の顔は見れない。

すると彼が思いがけないようなことを言ってきた。

「霧島さん、俺でよかったら付き合わない?」

「え!?」

これが私の初恋の始まりだった。
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