秘めた恋

彼が選んだのは・・・

喫煙所に向かう途中、杉並と出くわした。
これは好都合だった。

「お疲れ様です。」俺がそう挨拶をすると
向こうもお疲れと気だるそうに応えた。

俺はすれ違い様に「なんで嘘ついたんですか？」と尋ねると
向こうは「何がだ。」と怪訝そうな顔で言って振り返った。

「どうして自分がデザイン画を考案したと嘘をついた。」

俺が率直に尋ねると彼はわざとらしくため息をつき

「厳密にあれは俺の妹が考えたんだ。」と応えた。

「俺は、高梨美優が自分で『デザイン画が出来た』と言ったのを聞いた。」

彼の眉間のシワが寄った。

「あの日、俺が喫煙所に行って杉並さんに副社長から呼び出しがあったと伝えた時、
彼女はそう言ってデザイン画をあなたに渡した。それを副社長に見せて
話が進んだのではないか？」

「なにをバカな・・・」彼は笑った。

杉並は俺に近づくとこう言ってきた。

「たかが、あれしきのことで騒ぐんじゃねー。お前も俺の親父が役員ってことくらい
知ってるだろう。この会社に居続けたければ出しゃばった真似はするな。」

俺はふっと笑うと奴に向かって

「それは、こっちのセリフだ。」と応えた。

彼の表情が一瞬歪んだのを俺は見逃さなかった。

「何を・・・言ってんだ？お前・・・」