彼方の蒼


「委員長って進路どーすんの?」

 カンちゃんがお茶を一気にあおると、単刀直入に言った。
 あ、これはさっさとけりをつけて帰る作戦だ。 

「知っているだろう。第一志望不合格だったんだ」
「知ってる。で、どうするのかと聞いてる」

 委員長はなにも言わない。

「考えてないわけじゃないんだろ」
 それでもなにも言ってこなくて、そのまま数分が経過した。

「まさか考えてないとか」
 重苦しい雰囲気に耐えかねて僕が言うと、
「おまえに俺の気持ちがわかってたまるか」
と、間髪置かずに睨まれ、言い返されてしまった。

 沈黙を打破しようと気を遣ったのにな。
 僕もカンちゃんに倣って湯呑の中身を飲み干した。
 意外にも、ほどよく温くて飲みやすかった。


「勉強ができなかったのが原因じゃないんだ。体調を整えてもう一回受験したら、どこにだって合格できるだろ」

「簡単に言うな」

 これでも考えてしゃべってるんですけども。
 言いたいのを堪えて、言うべきことを僕は言う。

「合格したら、もともと志望していた学校にあって今の学校にないものを、不足分を身につけていけばいい。それだけのことだろ」

 内山のことを考えていた。
 内山と話したあの日に僕が得心したように、委員長にも伝わればいいと思った。

「大人の力を借りてでも、進みたい方向に行くんだよ。協力者を見つけるんだ」
 
 人選ミスだね。
 今の委員長に会わせるべきなのは僕でもカンちゃんでもない。
 内山を連れてくればよかった。

「俺はもうだめなんだ」
「なんでそう思うの」
「落ちてしまった。不名誉極まりない。親に申し訳が立たない」

「親は関係ない」
とカンちゃんが言えば、僕も続いた。
「くじけて立ち直れないのを親のせいにしているみたいだ。僕はそう思ったよ」
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