彼方の蒼
 僕はとても穏やかな気持ちで先生と先生の息子の生活を見守ることができていた。
 数年前には決して想像できなかった未来が今ここにあった。
 やっぱり、先のことってわからないものだ。


 さて、そろそろ持ち場に戻らないとさぼりがばれてしまう。
 僕はアイスコーヒーを一気に飲み干し、グラスをすすいで洗い籠へ伏せた。
 テーブルに四角いものが見えた気がして戻ったら、案の定、大事なものを置き忘れていた。
 同窓会の案内状。

 坂の途中のポストに投函していけばいいか、とバッグをあさり、先の丸まった鉛筆を握る。
 僕は出席に丸をつけ、高校卒業以来帰っていない故郷と中学時代のみんなを素直な気持ちで思い出していた。



  ― 彼方の蒼・了 ―
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