白い恋の結晶~キミへと続く足あと~


「劇のキスシーン」


「…………」

柊が、切なそうな目であたしを見つめる。


彼の瞳に捕まり、あたしは金縛りにあったかのように目を逸らすことが出来なかった。


ゆっくり、ゆっくり、柊の顔が近づいてくる。


彼の吐息を感じるほどの距離だ。


あたしは突然のことに、目も口もポカンと開けてしまいジッと固まったまま。


あたし達の唇が触れるか触れないかのギリギリのラインで、柊の動きがピタリと止まった。


そして、そっと離れる。


「ごめん。冗談」


そう言って、あたしの頭を優しく撫でた。


あたしの顔は、もう見ずに。


柊はさっと立ち上がると、あたしに背を向ける。


「あ……」


柊がドアへ向かって歩きだしたその時、絨毯を見下ろし足を止めた。


「あった。俺らの衣装」


柊は絨毯の上に散らばった衣装の中から、王子と姫の衣装を見つけ出し、口角をきゅっと引いてあたしを振り返った。


あの頃と同じような、無邪気な笑顔で。




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