最悪から最愛へ
渚は、集中出来た。ついでに感情移入まで出来た。ハンカチで目を押さえる。映画は、クライマックスを迎えていた。愛に障害はつきもので、障害を乗り越えた二人が感動の再会を果たすという感動的シーンが涙を誘った。


峻は泣く渚を横目で見て、手を握る。集中し過ぎている渚は握られた手に気付いていないようで、涙を抑えるのに必死である。

しかし、涙が止まらないまま、エンディングを迎える。


「感動した?」


「はい。良かった…幸せになれて…」


「うん。そうだな」


感動が止まらない渚に峻も同意する。


「あ!」


「なんだ?」


「何で…手…」


やっと握られている手に気付く。


「握っていれば、落ち着くかと思ったけど、効果なかったみたいだな」


「いえ…なんだかほんわかしたのは、きっとこの手の…」


珍しく素直で純粋な渚だ。いつもみたいに言い返すことはしない。それに、気付いても手を離そうとしない。

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