うつくしいもの

寺岡さんは、訪ねて来た私を部屋の中へと通すと、

部屋の真ん中で立ち竦む私を、
背後から抱き締めて来る



えっ――…



足がガクガクと震えるくらいに驚いてはいるけど


もしかしたら、
とほんの少しだけ思っていた




「――食事は、ルームサービスとかですか?」


声が震える



目の前にダブルベッドが有って、

いつか見たラブホテルのベッドよりもそれは上品なのに


あの時よりも、
その存在感を感じる




部屋の中は昼間なのに薄暗くて、

遮光カーテンがその光を遮っている




「――俺、自分がプロデュースする女の子を抱いて、

その子が売れて行くのを見るのが好きなんだ」


寺岡さんの右手が、
私の胸に触れる



服の上からでも、凄く嫌だ



辞めて…
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