二番目の恋人
「さぁ、行こう。今夜は僕が夕飯をつくるよ」
永が笑顔を私に向ける。


「わっ、嬉しい。なら、お願いしちゃおうかな」
お腹に手をあてたまま、永の笑顔に負けないくらいの笑顔を向ける。


キーン、ゴー。
上空からまた飛行機の音がした。



「空を自由に飛びまわってビジネス展開していく」
と言った翔に言いたくて言えなかった事がある。


「翔、私には自由な空じゃない。会いたくても会えない不自由な空だよ」



人は一番好きな人と結婚するから幸せとは限らない。二番目に好きな人と結婚した方が幸せだったりする。
どこかで仕入れた情報が時折頭をかすめる。


「ねっ、ビーフシチュー作って」
私は永の腕に手を絡ませる。

「いいよ、それから真帆の好きな人参サラダも作るよ」
少しハスキーな永の声がブルー系のチェックシャツと一緒に揺れる。
今日の空のようなブルーは、永にとても似合っている。


「好きだよ」
と言った私の声が飛行機の音と波の音でかき消された。


時は5月。
もうすぐ私は母になる。


END
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