Dream doctor~心を治す医者~
プロローグ
                                プロローグ


    夢――それは心を映す鏡。夢は心と深く繋がっている――――。

    はるか未来。世界の科学はどんどん発達していき、一家に一台ロボットがあるのが当たり前になっていた。
    科学の発展とともに街中の緑は消え、コンクリートだらけの冷たい都市へと変わりつつあった。

    森林の数も減り、緑が残っている場所は僅か。
    そして、緑に触れ合わなくなった人々の心は、昔とは比べ物にならないほどに荒んでいき、精神を壊す人が後を絶たなくなった。

    次々と沢山の人達が心を壊していく中、一人の優秀な科学者が"あるもの"を作り出した。
    ――それは、心と深い関係のある夢の中へと入り、垣間見ることができる機械だった―――。


    科学者はその機械を使い、人々の心が壊れる原因を突き止めた。
    ―獏―と呼ばれる妖獣の仕業だった。

    "獏"は古来より悪夢を食べると言い伝えられ、厄除けの象徴とされている。しかし、実際に人々の夢の中に現れた"獏"は、言い伝えとはまるで正反対の存在だった。
   
    細長い胴体に象のように長い鼻。長い腕と足を持ち、口には恐ろしく鋭い牙。二足歩行をする個体もいれば、四足歩行の個体もいた。大きさは個体によってまちまちであった。
    緑が減ったことにより、ゆとりのなくなった人々の心の隙間へと入り込み、夢を喰らっていたのだ。

    科学者はこの強大な敵を、持ち前の頭脳を持って人々の夢から消滅させることに成功した。人々は彼に感謝し、敬った。

    科学者は、六年にも及ぶ"獏"との長い戦いの中、機械と"獏"を倒す方法を三人の弟子へと授け、

「人々の夢を喰らい、心を壊す"獏"をどうかこの世界から消し去ってくれ……」

    という遺言を残し、享年五十歳の人生に幕を閉じた。

    三人の弟子達は遺言通り世界各地を回り、人々の心に巣食う"獏"を消滅させていった。荒んでいた人々の心は、徐々に昔のような輝きを取り戻していった。

    夢の中へと入り、まるで嘘のように荒んだ心を元気にしてしまうこの三人の弟子達を、

    人々は"Dream doctor"と呼んだ――――。
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