恋のはじまりは曖昧で

最終的に『挨拶して名刺交換したりするだけだから、そんなに気負うことはないよ。何事も経験だし、それに美味しい料理がタダで食べられるなんてラッキーだよ』という三浦さんの言葉で気が楽になった。
そういった経緯があり、私も参加することに決めたんだ。

そして田中主任と一緒に名刺交換して関連企業の人と軽く話をした。

名刺交換なんて生まれて初めてやったので、名刺を差し出す時に手がプルプル震えてしまった。
相手の人にクスッと笑われて、情けない名刺交換デビューになったのは苦い経験だ。
でも、電話でしか話したことのない相手と面と向かって話すのは緊張したけど、営業事務の私にはいい経験になった。

「お疲れさん。一通り挨拶も済んだから料理でも食べようか」

「はい」

田中主任に促され、料理を取りに行くことにした。
美味しそうな料理を前にして、どれから食べようか迷う。

お皿を手にいろいろと見て回る。
エビ、ホタテなどの海の幸のマリネ、生ハムとサラミの盛り合わせ、ローストビーフ、ルッコラとスモークサーモンのサラダを少しずつ取りお皿にのせた。

食べ始めようとした時、田中主任を呼ぶ声がした。

「田中くんじゃないか。久しぶりだな」

「柊さん。ご無沙汰しています。高瀬さん、悪いんだけど先に食べててもらえる?」

「はい、分かりました」

田中主任は知り合いの男性の輪に向かって歩いて行き、談笑を始めた。
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