恋のはじまりは曖昧で

パーティー会場にはお酒もあり、私は軽くたしなむ程度にお酒を口にしていた。
こんな場所で酔っぱらう訳にはいかないからね。
田中主任は車で来てるからノンアルコールの飲み物を飲んだらしい。

田中主任の運転する車に乗るのは何度目だろう。
確か一度目は、片岡さんから田中主任あての書類を現場に届けた時。
二度目は、私が体調を崩した時。
じゃあ、今日は三度目かな。
結構な頻度で乗せてもらっているような気がする。

他の営業の人が運転する車に乗ったことなんて一度もない。
普通に生活していて、そんな機会はまずないからなぁ。

チラリと運転している田中主任を盗み見る。
真っ直ぐに前を見据えているその姿に見惚れてしまう。
いつ見てもカッコいいな。

「高瀬さん、今さらだけど料理はちゃんと食べた?」

っ!!!
ハンドルを握っている田中主任が急に聞いてくるから、少し焦ってしまった。
じっと見ているのがバレたってことはないよね?
何とか平静を装いながら答える。

「はい。美味しくいただきました」

緊張するとかいいながら、ちゃっかりデザートまで食べた。
目の前にあんなに豪華な料理が並んでいたら食べなきゃ損だし。

「そうか、それはよかった」

「田中主任は食べられたんですか?」

挨拶回りとかが忙しそうで、あまり食べていない印象だった。
それだったら、私だけ満腹とか申し訳ない。
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