恋のはじまりは曖昧で
それにさっき海斗から言われたけど、私の嘘は見抜けるみたいだし。
ムカつくけど……。
何ていうか、海斗は家族といるような感覚で楽なんだ。
「そろそろ出ようぜ」
海斗に促され、席を立つ。
「うん、そうだね。おじちゃん、ごちそう様。美味しかったよ。唐揚げとかもありがとね」
「そうか?そりゃよかった」
「おっちゃん、また来るよ」
会計を済ませ、店を出た。
「紗彩、歩きだろ?家まで俺の車で送ってやるよ」
「ホント?って……ん?俺のって言うけど、海斗はまだ車持ってなかったでしょ?」
二週間ぐらい前に『早く車こねぇかな』ってボヤいてたのを覚えている。
「チッチッチ、それが持ってるんだよ」
ニヤリと口角を上げ、人差し指を立てて右左右と振る。
それがちょっと憎たらしい表情でイラッとした。
「あっ、もしかして」
「おう、先週納車したんだ。お前が助手席一号だぞ」
「え、私が一番でいいの?」
「あぁ。紗彩がいいんだよ」
ニッと歯を見せて笑う。
通勤の為に必要だからと、就職祝いということで海斗の両親が新車を購入してくれたらしい。