恋のはじまりは曖昧で
テーブルには資料が広げられていて、それを邪魔しないように部長から順にコーヒーを置いていく。
まだ慣れなくて、緊張し手がプルプル震える。
こぼさないよう気を遣いながらすべて置き終わると小さく息を吐いた。
「高瀬さん、ありがと」
部長たちはお礼を言ってくれ嬉しいけど、わざわざ話を中断させてしまい、申し訳ない気持ちになる。
「失礼します」と頭を下げて会議室を出る。
お盆を給湯室に置き、自分の席へ座りパソコンを起動させた。
メールチェックをしていたら、次々に営業の人たちが出社してくる。
「おはようございまーす」
中でも、元気よく声を張り上げるのは浅村くん。
その元気を少し分けて欲しいぐらいだ。
「おはよ、朝から元気だね」
「まぁな。朝、声を出すと一日頑張れそうな気がするんだ。それに声のハリで今日は調子がいいとか悪いとか分かるんだよ」
「へぇ、そうなんだ」
浅村くん独自の考えを口にしてたけど、大して興味もなかったので適当に返事をした。
「お前さぁ、もっと俺に興味を持てよ。いつも素っ気なさすぎる!今もどうでもいいような顔してたし」
「え、気のせいじゃない?そんなことないと思うけど……」
浅村くんに突っ込まれたので誤魔化したけど、完全にバレていた。
ふと、海斗に思ってることが顔に出るって言われたのを思い出した。