恋のはじまりは曖昧で

「それってどういうことですか?」

西野さんが私と同じ疑問を口にする。

「目は口ほどにものを言うって言葉があるでしょ。河野はまさにそれ。口を開かなくても、目を見たら不機嫌とかイラついているのが手に取るように分かったわ」

「私には橋本さんのようには分かりませんよ」

「それこそ、同期で付き合いが長いから分かるようになったと思うわ。そういえば、あと御三家で残ってるのは田中だけね」

不意に田中主任の名前が出てきてドキッとした。

「私、てっきり田中主任は花音ちゃんと付き合ってるんだと密かに思ってました。いつかの飲み会で花音ちゃんに『好きだ』って言ってたし、言葉は悪いですけど主任は前はチャラかったのに、ある時を境に誰の誘いも乗らなくなったから二人は上手くいったのかなと……」

「そんなこともあったね。懐かしいわ。飲み会と言えば、田中は花音に嫌がらせしていた女子社員に面と向かって抗議して、あれにはスッキリしたわ」

「そんなこともありましたね。私も前々からあの人たちの言動にはムカついていたので清々しました。きっちり異動もしたし」

嫌がらせ……以前はそんなことがあったんだ。
今は優しい人ばかりでいい職場環境で働けていることに安堵した。

< 55 / 270 >

この作品をシェア

pagetop