恋のはじまりは曖昧で

「でも、相変わらず田中主任にアプローチしてる人はいますよね」

「そうみたいだね。ぶっちゃけ以前のようなチャラ男に戻るのかと思っていたけど、私の予想に反して誘いは一切断ってるからね。田中が真面目な好青年になっちゃってビックリよ」

「もしかして、まだ花音ちゃんに未練とかあったりするんですかね?」

「さぁ、どうだろう。それは本人にしか分からないことだけど、私の目から見て未練はないと思うけど」

私は橋本さんの言葉を聞いてなぜかホッとしていた。

「だって、田中は仕事ばかりしている印象があるからね。今は女性の影が全く見えないし。実際のところはどうなのか聞いてないから分からないけど、田中には幸せになってもらいたいわ」

「橋本さん、お母さん目線なんですけど」

「直接話を聞いた訳じゃないけど、見てるといろいろ思うことはあったからね。だから田中には頑張れよって言いたくなるんだよね」

西野さんと橋本さんの会話を黙って聞いていた。

自分の好きな人が上司の彼女だったなんて、想像しただけで辛すぎる。

好きな相手が必ずしも自分のことを好きになってくれるとは限らない。
恋愛初心者の私にはレベルの高い話で、恋って思い通りにいかなくて難しいなと思った。
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