seasons.(シーズンズ)【完】

gift.

*夏枝side 


受験本番を控えているせいか、妙に落ち着きのなかった冬休みはすぐに明け、早速書かされた願書にますます緊張は高まった。

あたしもいい加減自覚を持てと周囲に駄目出しされた結果、最近の自習時間は真面目に参考書と向き合う日々が続いている。

こんなに勉強するのはきっとこれが最初で最後でしょうけど。


「バレンタインもうすぐだよね~」


人が自分の世界に入り浸って勉強しているっていうのに、呑気に話し掛けてくる加奈。

それなりの成績を持つ加奈は、志望校のボーダーラインに難なく達しているから余裕綽綽なのね。

生憎加奈と違ってあたしにそんな余裕はないわ。

と言いたいところだけど、こんな時だからこそそういうイベントで息抜きも必要なのかもしれない。


「夏枝は誰かにあげるの~?」


去年なら誰と訊くまでもなく「どうせ秋人くんでしょ」とからかってきていた。

でもあたしの恋はもう終わってしまっていることを加奈は察している。
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