seasons.(シーズンズ)【完】

ささやかな日常

*秋人side


光陰矢の如しとはよく言ったもので、僕達の中学校生活最後の一年間は早くも12分の1が経過していた。
たかがひと月、されどひと月。
互いに友好な関係を築くのには事足りる時間だったらしく、恐れ多くも僕が委員長を務めることになったD組内は、いつも活気で溢れる楽しいクラスと化していた。
今日もほら――、


「こら、大人しくするー!」
「だ、だって怖いんだもん……きゃあっ」
「あーもー動いたら駄目だってば!金沢そっち押さえて、ハルはこっち、あと加奈ドライヤー取ってくれない?」
「へいへいほ~」


……なんだか賑やかというよりは荒れているみたいですけど。
スライド式のドアを開ければ、窓際の席に群がる一同が目についた。
ゆっくりとそばに歩み寄り、近くにいたクラスメイトに声を掛ける。


「随分と盛り上がってますね」
「おー進藤どこ行ってたんだよー?給食食べたあとすーぐいなくなるんだもんな」
「先生に呼ばれてたんですよ」


人だかりの中心からは、この場に不釣合いな機械音が聞こえてくる。
恐らくドライヤーでしょう。
それにしてもこの状況は一体どういうことなのでしょうか?
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