純粋な恋をした
2 君の全てが僕のものになるなら
窓からふく風でゆらゆら揺れる小さな白い花。
その花は恋焦がれている彼女から貰ったものに変わりなくて。それだけでも十分嬉しいのに、僕の住んでいるマンションの前の花屋にメグがいると思うと毎日が幸せで。
あれから数日たった今でも夢じゃないのか不安になるぐらいに嬉しくてしょうがない。

夢なら一生覚めないままでいいんだけどな。
そんな事を思いながらゆらゆら揺れる白い花をどうやってドライフラワーにしようか考えていると突然リビングから女の人と男の人の叫び声が聞こえた。

ああ、まただ。
また母さんと父さんが喧嘩をしている。

聞きたくもないのに嫌でも入ってくる声に耳を澄ませば、小さな頃から変わらず僕の事についての口喧嘩をしていた。
僕のできが悪いだとか。いつまでも女々しいだとか。お前に似て容量が悪いだとか。あなたに似てめんどくさいとか。終いには生まなければよかったとか。

本人たちは全て聞こえていないだろうと思って話しているようだが、そういう物に限ってはっきりと聞こえる事をこの人たちは理解できないのだろうか。
第一に子供の事について喧嘩をするのが一番の問題点なんだろうけども。

はぁと重たいため息をつきながら、できる限り聞こえない距離に行こうと白い花が置いてある窓際まで椅子を持っていき、腰掛ける。すると外からいい風がふいているせいなのか、大分二人の話し声は聞こえなくなって。

少し気分がいいまま真下にある花屋を見てみれば、そこにはスモーキーアッシュカラーの髪の毛を揺らしながらエプロンをして接客をしてるメグの姿があった。
ああ、可愛い。メグは何をしても可愛いと思う。

僕がメグに恋をしているからその分フィルタがついているけども、そのフィルタを取り除いてもメグは可愛い。

ふわりと風が吹き自分の金髪の髪の毛が揺れ、視界に入ってくるのをどけながら接客をするメグを見つめる。すると僕の愛が伝わったのかはわからないが、メグは僕の存在に気づいたらしく面白そうに笑いながら顔を上げていた。

「何やってるの?」

いつもと遠いからか、少し大きな声で聞いてくるメグ。
必死に僕を見上げて少しでも僕に聞こえるようにと近づいてくるメグがどうしようもないぐらいに可愛くて。
頬が緩んでだらしない顔になりそうながらも、僕もいつもより大きな声で返事をする。

「どうやってドライフラワーにしようか悩んでるんだ。」

「それはそれは。」

「メグから貰った物は全部僕の宝物にしようと思っててね。」

「それはやりすぎ。」

「そんな事ないよ。僕にとってメグはそれぐらい大きな存在っていう事だよ。」

思っている事を素直にそう言えば、メグは何故か顔をほんのり赤く染めて天然たらしか、と僕に呟いてきた。
天然たらしは誰かまわず可愛い笑顔を僕以外の人間に振りまいているメグの事だと思うんだけど、と口に出せば更に彼女は顔を赤く染めて僕を睨んできた。うん。メグはやっぱりどんな顔をしても可愛い。
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