アイツ限定
まぁ、驚いたよ。
上下ジャージの綺麗な女の子が一生懸命にシューティングしてるんだからね。
身長はそのころから高かったな…多分160はあったと思う。
だけど、あいつ、俺の姿見るなり、真っ青な顔して逃げるんだよ。
急いで、ベンチに置いてあったカバンをもって、猛ダッシュで逃げてくんだからな。
もう、小動物みたいに。
そんときは、俺そんな怖い顔してたのかなって思って、少し反省しながら帰ったんだよ。
でも、次の日も、また次の日も、マリはその公園でひたすらシュート打ってた。
俺は、また怖がられたらまずいと思って、陰からこっそりとそのこのシュート見てた。
マリは何でかわかんねぇけど、サウスポーの練習ばかりやってた。
見たかんじ、右利きのはずなのに。
そのせいで、上手くボールを操ることはできてはいなかった。
今思い返せば、俺たぶんストーカーみたいだったと思うわ。
だけど、当時はただただ、マリの一生懸命バスケする姿が好きで毎日チャリを止めてたんだっけな。
で、ある日、このままだったら俺ただの変人じゃんと思って、もう一度、マリの前に姿現したんだよ。
やっぱり俺の姿見たらマリの顔は真っ青になって逃げだそうとした。
だけど、今回の俺はちがった。
部活から借りてきたバスケットボールをカバンから素早く取出し、「おい、しっかり見てろ」なんて言って、俺はその場からシュートを放った。
多分、3pラインよりも遠いところから打ったと思う。
マリは、俺の声に反応して少しだけ、こっちを見た。
その瞬間、俺の放ったボールが綺麗に籠の中に入った。
ここで外さなくて本当によかったと今でも思う。