あの日のナミダ
拠り所。



「元気ー??」
私は病室の扉をノックなしに開けて、明るくそう言った。

「あっ、梓依ちゃん。
今日も来てくれたんだ。」
綺麗な顔の男は優しく微笑んでそう言った。



彼の名前は、西島 潤夜ーニシジマ ジュンヤー。
似ても似つかないくらいの美形さんだけど、私の実のお兄ちゃん…もう1人の幼馴染みでもある。
私の唯一の家族。

何故彼が、私の事をちゃん付けで呼ぶのか…それには理由がある。

彼は、幼馴染みの事も恋人の事も家族の事も…妹の私の事ですら憶えていない。
記憶喪失だから。


始めは辛かったし、痛みが完全に忘れた訳じゃないけど……。
でも、もう慣れた。
いつかは思い出してほしいけど、お兄ちゃんはお兄ちゃんだから。
憶えてなくても、全てが違うなんて事はない。
だから、焦らない。



だけど、そう思えるようになるまでに半年かかった。
それほど私が、お兄ちゃんっ子だったって事なんだけど。





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