センセイの好きなもの
『母さん…?』


そっと手に触れると、まるで骨と皮だけのようなやせ細った手だった。


『巧、落ちついて聞いてくれ。お母さんは末期癌なんだ。余命3ヶ月と言われた。もちろんそれより早く亡くなることもなる』


……末期癌?余命3ヶ月?

静かな病室の中で親父の低い声だけが響いていた―――。





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ツムが作ってくれた料理は全部食べた。デザートはこれまた俺のお土産の苺。

ツムは神妙な面持ちで俺の話に耳を傾けていた。
両親の離婚のこと、母との別れ、離婚弁護のこと、そして母の最期の話になった。
誰かにこんな話をするのは初めてだ。
友達ですら母の死は知らない。子どもの頃に離婚したことだけは言ったけれど、その他のことは紗絵も知らない。付き合う前のことであって、いつか話そうと思いながらも言えないまま別れてしまった。
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