センセイの好きなもの
「なかなか行くヒマがなくてさ。ちょっとイメチェン。みち子さん、おやつにしてよ。腹減った」


「はいはい。何か持ってきますよ」



みち子さんが出て行ってしまうと、巧先生は私の隣に座った。何を言うでもなく、でも言いたいのかチラチラ見てくる。


「…何でそんなにクルクルなんですか」


「ツムが俺を放ったらかしにするから?」


「してません。私だって忙しいんです」



放ったらかしにしてると言うなら、そっくりそのまま返してやりたい。
私は巧先生に付き合おうと言われたわけじゃない。お互いの気持ちを言ってキスしたこと以外、何も変わっていない。
仕事で顔を合わせるだけだし、連絡することもない。



「今日は俺もお前と一緒に上がる。手伝うから」


「ダメです。すっごい細かい仕事だから集中させてください」


ボールペン一つ作るのに、本当に神経を使う。時間もかかるし料理するのも惜しいくらいで、実際ここのところ夕飯はカップラーメン。


「それなら俺がメシ作る」


「…は?」


巧先生はどうしても私の家に来るらしい。
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