センセイの好きなもの
「黙ってたことは謝る。僕が引き受けたことだし、ツムちゃんだって簡単に人に話せることじゃなかった。だから黙ってたんだよ。でもそうか…ツムちゃん、よく話せたね」


「巧先生のおかげなんです」



大先生は優しい笑顔を向けてくれる。隠し続けてきたことを話せたのは巧先生のおかげ。人を信じることを教えてくれたから。



「あっ、そうそう。俺たち付き合うから」



………付き合う?


突然のことに私も大先生もポカンとしてしまう。付き合うって誰と誰が?


「ツム、何ポカーンとしてんだよ」


「巧、やっぱりお前はツムちゃんのこと口説いてたのか」


「口説いてねーよ」


確かに口説かれたことはない。それに巧先生がいつ私のことを好きになったのかも分からない。それさえ聞いてなかった…。


「あの…付き合おうなんて言われてませんけど」


ギャーギャー言い合っていた二人はピタリと静かになって私を見てくる。
だって…こういうことはうやむやにしちゃいけないって聞くけど…。
言わないほうが良かったかな?
< 181 / 234 >

この作品をシェア

pagetop