センセイの好きなもの
「ツム、俺の予定は?」


私は急いでホワイトボードに目をやる。今日は午後から2件予約があるけど、それまでは空いている。


「まぁ~巧。秘書がいるの?いいわね、スケジュール管理に困らなくて」


わざとらしく、少し鼻につく言い方だ。


「午後からはアポがありますが…それまでは何も」

「そうか。ならいい。高村さんのことはこちらも色々話すことがある。ツム、お茶よろしく」


巧先生は棚からファイルを取り出す。高村さんのことをまとめてあるもので、クライアント一人ごとに作成・保管している。
応接室のドアを開けたとき、巧先生はなぜか私を振り返ってニヤリとした。
そして口に人差し指を立てる。シーッ、とでも言いたげだ。


「玉井先生、ツムは秘書なんかじゃありません」


「じゃあ事務員さんかしら?今日は野村さんがいらっしゃらないようだけど」
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