恋よりもっと。~トモダチ以上カレシ未満~
「全然、嫌じゃないよ。むしろ、琴が店決めて連れてきてくれるなんて嬉しいじゃん」


幾郎はいつもの調子だ。
今日はどんな言い訳で奥さんを騙してきたんだろう。
どんな言い訳を駆使すれば、浮気ってできるんだろう。

私たちはお酒とつまむものを少し頼んだ。
切り出すには思いの外、時間がかかった。
他愛ない話を遮って、私は口を開く。


「幾郎、私たち別れよう」


はっきりと言葉にした。
私は今までの恋人との別れも、すべてカタをつけて終わりにしてきた。
何となく自然消滅なんてあり得ない。

幾郎は一瞬真面目な顔になってから、すぐに笑い飛ばした。


「何言ってんの?なんで別れるの」


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