あなたを愛する者
「井関せんせー!」
キャーという声が上がった。
廊下には、女子に囲まれた井関先生が見える。
いつもの光景だ。
どこから集まってきたのかと思うくらいの女子生徒の数。
あのうるさい連中を軽くあしらうんだから、井関もなかなかやるなと関心してしまう。
何か質問しているのか、とても至近距離に感じる。
ノートを見る、伏し目がちの先生。
そのやり取りが、少し開いたドア越しに見える。
騒がしさが嫌で、昼休みはいつも外に逃げていた。
でもこの梅雨、連日の雨で気分も憂鬱。
私はフォークに指したブロッコリーを、パクッと口に入れた。
そしてもう一度、先生の方を見る。
今までこんな風に、あの光景を観察したことなかったなぁ……。
生徒の頭に手をやり、笑顔を向ける井関先生。
ーゴクッー
ーチクッー
私は口に含んだブロッコリーを飲み込んだ。
同時に起こった、チクッとした痛み。
あれ?
今のなに?