オトナになるまで待たないで
トイレが空いている頃合いを見計らって、ゴウを中に入れた。

一瞬、洗面台にいた中年女性が目を丸くしたが、私の介助をしているのが分かると、気の毒そうに目を逸らしてくれた。


車椅子も入れる個室へ入り、ゴウの着替えを待つ。



トイレ……暑い。



外は誰もいなくなった気配。



「私、水飲んでくる」

ホームに冷水機があったはずだ。



ドアを開けた途端、入り口から人が入ってくるのが見えた。

背後からゴウの腕が伸びてきて、ドアが勢いよく閉められる。




私はドアの隙間から様子をうかがった。

入って来たのは、女子高生三人組。

化粧直しをしながら、楽しげにしゃべっている。


これ……そうとう掛かるんじゃない?

そう言おうとして振り返った途端に絶句した。



ゴウはすでに上半身裸だ。



もう!?

もう脱ぐか!?


心臓がバクバクして思わず飛び出そうとしたら、

「まだ!」

背後から、左手をつかまれた。


そして右手が…ウワサの壁ドンだ……!



綺麗な手だけど、さすがに男。

大きいし、力が強い。



頭がクラクラする。

私、ヤバいだろ。

違う、ゴウがヤバいのか?

ゴウが私に襲われるとか……?



ナイ!

ナイナイ!


女子集団が出て行く気配がして、私はこわごわ後ろを振り返った。

ゴウがうなずく。



私は逃げるように外へ出て、水をカブ飲みした。



違う違う。

私が意識してるのが、バレたら大変だっていう話。



そっかそっか。

それはヤバいね。

相手、女子だもんね。



私って…何なの…?
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